未納の年金保険料は納めた方がよいか?

年金手帳とお金

 早いものでもう12月です。東京もすっかり寒くなってきました。今年は換気のために仕事場も電車も少し窓を開けているので、例年以上に室内でも寒さ対策が必要ですね。私も今日はニットのセーターやユニクロの「極暖」を着ていました。

 さて、少し前になりますが何人かの方から、「未納になっている年金保険料は納めた方がよいでしょうか?」という質問を受けたので、少し考えてみたいと思います。

会社員は未納にならない

 日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は全員、国民年金の加入義務があります。そう言われても、はて?と思う会社員の方も多いでしょう。会社員や公務員など厚生年金の適用事業所に勤務している人は、厚生年金保険料として国民年金の分も一緒に毎月給与から保険料が天引きされているからです。ですから、会社員や公務員は(会社がきちんと保険料を納めているという前提ではありますが)年金保険料が未納になることはありません。また、会社員や公務員に扶養されている専業主婦(夫)の人も、国民年金の第3号被保険者となるので、自分で保険料を納付する義務がありません。

 自営業者やフリーランス、学生、無職等で20歳以上60歳未満の人は、住んでいる市区町村に直接国民年金の保険料を納める必要があります。学生であることや収入が少ないこと等の理由で免除・猶予申請をしていればよいのですが、何の申請もせずに保険料を納めない場合には「未納」となります。

未納の分、将来の年金が減る

 20歳から60歳になるまでの40年間、毎月国民年金の保険料を納めると、原則として65歳から年額781,700円の老齢基礎年金を受け取ることができます(金額は2020年度)。保険料を納めていない期間があると、その分、年金額が減ります。

 例えば、保険料を40年の半分の20年しか納めていなければ、年金額も半分になります。また、老齢基礎年金の受給資格期間は10年なので、10年未満しか納めていなければ全く受け取ることができなってしまいます。

未納や免除・猶予された期間の保険料は追納できる

 ただの「未納」の場合、納期限から2年間は過去の保険料を納める(追納といいます)ことができます。免除や猶予の申請をしていた場合は、10年間追納することができます。

 未納の期間があると、年金事務所から督促状が届きます。日本は「国民皆年金」の国なので本来は納める納めないの選択肢はなく、どっちが得かという話ではありません。ただ、保険料はそれなりの額ではあるので、追納して“元がとれるのか”が気になるのはわからなくもないです。ということで、次項で計算してみます。

追納した方がよいのか?

 40年=480ヶ月保険料を納めて満額の781,700円を受給できるということは、「受給資格期間10年は満たしているが、満額は受け取れない人」の保険料納付済期間が1ヵ月増えると
 781,700÷480≒1,628.5円
将来受け取る年金額が増えるということです。

 2020年度の国民年金保険料は1カ月当たり16,540円ですので、
  16,540÷1,628.5=10.156…≒10年2ヵ月
 ということで、10年2ヵ月以上老齢基礎年金を受け取れば、「追納した額よりも、受け取った年金額の方が多くなる」ということになります。

 原則通り65歳から年金を受け取るとすると、75歳2ヵ月が“損益分岐点”となります。日本の平均寿命は女性87.45歳、男性81.41歳(2019年)ですので、平均的には「追納したほうがよい」ということが言えます。

 ※本来は平均余命で考えるべきところですが、どの年齢でも現在の年齢+平均余命は平均寿命より上なので、結論は変わりません。

公的年金はどうなるかわからない?

 メディア等で年金不安が煽られ過ぎているので、「そうは言っても、将来今の水準で年金を受け取れるかわからないのでは・・・」と思う方もいるでしょう。たしかに、物価等の水準により年金額は毎年見直されています。ただ、上記の計算が根底から覆るほど(例えば、20年分に相当するとか)ということにはならないと自分は思っています。

 「長生きリスク」が叫ばれる中、終身で一定の水準の金額を受け取れる公的年金は、最強の“保険”です。追納できる保険料がある人は、家計に余裕があるのならば、追納することをお勧めします。

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