私も「新型フリーランス」?

 フリーランサーの「ランサー(lancer)」とは、槍を持った騎兵のことだそうです。戦争時にどちらの勢力とも契約していない騎士、傭兵をfree lancer(フリーランサー)と呼び、そこから組織を離れて働く人を指す言葉になったそうです。

 私が登録している東京都社会保険労務士会では定期的に「必須研修会」というものがあり、eラーニングで1.5~2時間程度の研修を半年に1度受講することになっています。テーマや講師は毎回異なるので、今一つだなと思ったときは別の仕事をしながら音声は一応聞いて…みたいなことも正直あります。

 今日が受講期限だった、2024年度後期の研修会は「フリーランス新法の適用範囲とその対応に向けて」というテーマで神戸大学の大内信哉教授が講師でした。思えば、会社員だったとき、人事部に異動になって当時の部長に「この本読んでおいて」と最初に渡されたのが大内教授の著書でした。期待して見始めたところ想像以上に面白くて、最後まで資料を見ながら集中して受講しました。

 自分自身が今フリーランスにあたるので、保護される対象として興味深い点ももちろんあったのですが、従来の労働者・労働法との関連や法制定に至った背景などが抜群に面白かったです。中でも、「新型フリーランス」が出てきているという話を聞いて「これは自分のことか!?」と一人興奮して(?)いました。そこで言われていたのは下記のような点でした(大内先生のお話からまとめました)。

  • 日本型雇用システム(終身雇用、年功序列、企業別組合)で働く正社員は非常に安定しているが、残業も転勤もある、職種もどんどん変えられるといった負担も大きい
  • 従来はこの正社員と、「自由な部分はあるが処遇は低く、雇用が不安定」な非正規社員との2択だった
  • 最近は、元々このシステムの中で働いていたが、そこで満足できない、もっと自由に働きたいというハイスキルorミドルスキルを持った人たちが、独立してフリーランスとなっている
  • 元々いたクリエイターやデザイナーといったフリーランスに対し、新しく出てきた「新型フリーランス」であり、女性が多い印象がある(女性の働き方の多様化という側面も持つ)
  • (本人は認識の上だろうが)会社員とフリーランスでは社会保障(年金、健保など)の面で格差がある。「就労者」として同じように働いているのに、会社員かフリーランスかの違いだけで格差があることは正当化できるのか
  • 上記の点から、労働法は労働者を保護するだけでよいのか、という労働法の根幹を揺るがす問題提起となる可能性がある

 今月は自分も都立高校で労働法や社会保障について授業をする機会があり、そのなかで「会社員等は労働基準法や社会保険によって守られる部分が大きいけれど、フリーランスは守られない部分があるよ」といった話をしてきましたが、それを当然のものと思ってもいけないのだな、と感じました。自分がおぼろげに考え、ゆるゆると実践しようとしている働き方は、日本型雇用システムでも従来のフリーランスでもなく、その間にある第三の道なのかもしれません。

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