小説「老後の資金がありません!」を読んで

老後の資金がありません

 夏休みなので読書感想文というわけではなくて、先日地下鉄に乗ってて「老後の資金がありません!」と書かれたポスターを目にしました。FPとしては気になって調べたら、新橋演舞場で上演されている喜劇のポスターでした。天海祐希さん主演で映画化もされて、当初は写真にある昨年9月予定でしたが、延期されて今年10月30日から公開予定だそうです。恥ずかしながら、全然知りませんでした。

 ということで、遅ればせながら垣谷美雨さん作の原作を読んでみました。途中まではそうだよねーと思いながら淡々と読んでいたのですが、中盤からテンポが上がり、夢中で最後まで読んでしまいました。ネタばれになるので詳細は書きませんが、読んでいてFP的に注目した部分を解説したいと思います。
 老後の資金がありません(垣谷美雨、中公文庫)

年金が多い職業、少ない職業

 主人公も主人公の義母も、公的年金制度についてよく知ってます。

  • 自営業だったため月々の年金額は少ないが、・・・」(p.42)
  • 公務員だったんなら厚生年金じゃなく共済年金ね。その世代なら、妻のもらう遺族年金もかなりのものよね」(p.244)

 このセリフ、10年位前の自分には理解できてないです。年金の「1階」「2階」とか聞いたことはあるかもしれませんが、何のことかわからない人も多いのではないでしょうか。少し解説しますと、日本の公的年金制度は下記のようになっています。

(厚生労働省サイトより引用)

 薄いクリーム色の部分のうち、iDeCoと国民年金金は個人で加入し年金を上乗せするもの、「厚生年金保険」の上にある3つは導入している企業で年金を上乗せするものです。いずれも、すべての人が受け取れるものではありません。

 1階=国民年金と2階=厚生年金が該当者は皆加入義務がある国の制度ですが、見ての通り自営業者や農家などの「第1号被保険者」は1階しかなく、会社員や公務員、教職員には2階部分があります。厚生年金に加入した期間や給与の額にもよりますが、老後の年金の額が全然違ってきます。さらに、公務員や教職員はもともと共済年金という異なる制度だったのを2015年に統合しており、「退職等年金給付」という3階部分もあります。

 引用したセリフの2つ目は主人公の義母が言ったものですが、そういうことだったんですね。自分は自営業者だったのに、詳しい・・・。

1号被保険者は少なくてよいのか?

 2階にあたる厚生年金の方が歴史が古くて、それは会社員には定年があって必ず「老後」が来るからです。年金制度ができた昭和20~30年代はまだ農業従事者が多くて、農家には定年がないから年金が少なくてもそんなに問題はなかったんですね。

 しかし、今は第1号と言っても個人事業主やフリーランスも含まれますし、もちろん小説の義父母のように廃業した元自営業者も含まれます。誰にでも「老後」(働けなくなる期間)が訪れることを想定して、2階建ての人が増えるような制度が望ましいのではないかと思っています。短時間労働者(週20時間以上30時間未満)の厚生年金への加入拡大は決まっていますが、それでは加入できない人もたくさんいます。働き方も多様化していますし。

 あと、第3号被保険者(会社員、公務員世帯の専業主婦)も国民年金しかないですね。これについてはまた改めて書きたいと思います。

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