老後2000万円問題とは何だったのか

 年が変わってしまいましたが、昨年FPにも社労士にも関係する話題で大きくニュースになったのがいわゆる「老後2000万円問題」でした。結果として資産運用への関心が高まり証券会社の口座開設が増えたと言われています。一方で、「本当に2000万円不足するのだろうか」と疑問に思いつつ、「でも年金だけでは足りないだろうし」と不安を持たれている方もいることと思います。
 そこで、問題になった「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 『高齢社会における資産形成・管理』」(以下、報告書)の内容を改めてご紹介し、本当に老後に2000万円が必要なのか、私の考え方をお伝えします。

報告書の内容

 報告書では、高齢夫婦無職世帯の平均で「毎月の赤字額は約5万円」(報告書p.10)であり、「不足額約5万円が毎月発生する場合には、20 年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる」(同p.16)とあります。

 もう少し詳しく見ると、毎月の赤字5万円の根拠として棒グラフが載っており、収入・支出(いずれも月額)の平均が
 収入=20万9千円
 支出=26万4千円
となっています。引用しているデータの根拠は、総務省が毎年行っている「家計調査」の結果(2017年)ですので、現在の高齢者の平均として信頼のおけるデータです。
 月に5万5千円足りないので、1年間で66万円の不足、30年だと1,980万円≒約2,000万円足りなくなりますね、だから働いているうちから老後資金の準備をしておきましょうね、というのが話の流れです。

老後2000万円は必須ではない

 不足する5万5千円の大半は貯蓄から賄われているので、私はこのデータを見たとき「今の高齢者は、お金持ってるんだな」という印象を持ちました。実際、報告書の中でも、65歳時点における夫婦世帯の金融資産の平均は2,252万円と記載されています。

 これらのデータを素直に見て言えることは、「老後に2,000万円ないと足りない」ではなく、「今の高齢者は2,000万円あるから使っている」ということではないでしょうか?別の言い方をすれば、貯蓄が底をつかないよう上手く取り崩しながら生活している、ということです。平均支出26万4千円は必要な額ではなく、あくまでも現在の平均にすぎないのです。

まとめ

 当たり前のことですが、老後の収入と支出がどうなるかは人によって異なります。2000万円より少なくて大丈夫な人もいれば、もっと多く必要な人もいるでしょう。2000万円という数字に惑わされず、自分自身の老後の収入と支出がどうなるかを確認することがまず第一です。次回以降の記事で、老後の収入を確かめる方法や老後資金の増やし方などを取り上げていきます。

余談

 老後2000万円の話がどういった文脈で書かれたのか知りたい方は、今でも報告書が公開されているのでご一読を。(野党の議員は「5分で読める」とおっしゃってましたが、とても無理ですのでお勧めはしません)
 金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について
 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html

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