いつまでどのように働きますか?

 先週の記事で恐縮ですが、週刊東洋経済10月17日号の特集「定年消滅 70歳定年法の基礎知識」の内容が面白かったので、少しご紹介したいと思います。

“70歳定年法”

 改正高年齢者雇用安定法、通称「70歳定年法」が2021年4月から施行されます。現行では企業に65歳まで雇用の機会を提供する義務がありますが、70歳まで引き上げることを努力義務とするものです。ただ、これは「努力義務」なので罰則はなく、法改正によって来年から定年が70歳に引き上げられる会社は非常に少ないものと思われます。

 余談ですが、労働関係の法律ではこの「努力義務」がしばしば登場しますが、「義務」ではないので、即座に企業として対応する必要はありません。ただ、何年かして義務化されることもある(多い?)ので、いずれ義務になるかもと思っておいた方がよいです。

いつまで働くか

 法律の内容は記事を読んでいただくとして、働く側の個人としてはこの改正をどう感じるでしょうか?「70歳まで働かなきゃいけないのか…」と感じた方もいるのではないかと思います。

 「人生100年時代」という言葉もかなり一般的になってきました。60~65歳まで働いてあとは“余生”を送るという生き方にはだいぶ無理が生じてきているように感じます。「今の会社で雇ってもらえるうちは働きたい」という方には70歳定年はありがたい話かもしれません。しかし、いつまで働くかという大事な選択を法や企業が定める定年年齢に委ねず、自ら考えて実現していった方が、幸せな人生につながるのではないでしょうか。

「賢人」の言葉より

 記事では70歳定年について、多くの「賢人」へのインタビューが載っていて、働くこと、生きることに対する考え方として、なるほど!と思うメッセージが多数ありましたので、いくつか引用します。

野島廣司氏(ノジマ社長)

 体力と気力があって本人が働き続けることを望んでいるのであれば、何歳までだって働いてもらいたい。
 働き続けることで幸せになれる人が増えれば、それは結果的に会社の成長にもつながる。

出口治明氏(立命館アジア太平洋大学学長)

 人生100年時代が訪れると、20歳で社会人になったとして、残りの人生は80年ある。60歳はマラソンでいうと折り返し点だ。(中略)今は定年制があることで、多くの人が60歳以降を余生や第二の人生と考える。その発想では、人生が残り半分もあるのにもったいないと思う。

郡山史郎氏(CEAFOM代表)

 私は「90歳まで現役で働くこと」が目標だ。人生90年をサッカーの90分の試合に例えると、45歳くらいを境に、前半戦と後半戦とに分けられる。(中略)40歳を過ぎたら、自分のやりたいこともできることもわかってくるだろう。だからこそ45歳あたりで、職業人生はいったんリセットして、「競争社会」から「共存社会」へと頭を切り替えることが大事だ。自分が次にやりたいことに向けて準備を始めたらいい。

 昨年44歳で会社を退職して事務所を開業した自分としては、勇気づけられた思いがします。ほかにも面白いインタビューが多数あったので、興味のある方はご一読をおすすめします。

 ただ、雑誌のインタビューをうけるくらいのすごい人たちと庶民は違う!と思う方もいらっしゃるでしょう。出口さんはこのようにも言っています。

 歴史を見渡すと、人間の99%以上はやりたいことがわからずに死んでいく。一生探し続けて、やりたいことが見つからなければ、「自分は多数派だった」と思って死ねばいいだけだ。

 たとえ偉くなくても報われなくても、定年まで勤め上げるというのも立派な人生だと思います。いずれにしても、悔いのないよう生きていければ。

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