ハンコにはなぜ意味があるのか

ハンコ

 先週書いた「ハンコ廃止」に関するニュースは今週もたくさん流れ、昨日は「婚姻届・離婚届も廃止を検討」というニュースが流れました。インパクトがあるせいか、街頭インタビューまでして大きく採り上げられていました。改めて気づいたことなど少し書いておきます。

ハンコは承認の証

 婚姻届には、相手との結婚を互いに認めた証として押印します。離婚届も同様です。

 会社など組織内では、しかるべき権限のある人が認めた証として押印します。先週のブログで書いたのは「しかるべき権限のある人」以外の押印(とそれに代わる行為)をなくさないと、業務は効率化できないということでした。逆に言えば、本当に権限のある人は、何らかの形で押印に代わる行為を今後も行っていく必要があるということです。内部統制上も、承認行為そのものとその証跡を残すことは必須になります。

不正防止にはそれほど・・・

 婚姻届や離婚届が押印不要になったら、と想像して真っ先に心配になったのが「誰かが勝手に自分の名前で届を出してしまったらどうしよう」ということでした。しかし、婚姻届や離婚届のハンコは実印でなくてもOKなので、今でも三文判を買ってくれば勝手に届を出すことは可能です。

 それ以外でも、子どもが親のハンコを無断で押すとか、上司の引出しのハンコを勝手に押すとか、ハンコの不正な利用はいくらでもできます(自分がやってるわけでもないですし、推奨もしていませんが)。厳密な意味でハンコで本人確認されているのは印鑑証明を添付しているときくらいです。不正防止の観点では、ハンコかどうかに大きな意味はないように思います。

ハンコに意味があるのは私たちがそう思っているから

 こうして考えてみて、「大事な文書にはハンコを押すものだ」という意識が、私たち(少なくとも40代以上?)には想像以上に深く刷り込まれていることに気付きました。こういうものを文化と言うのでしょう。行政からハンコをなくすことが連日大きく報じられているのは、私たちの文化や価値観に関わるものなので、気になるからなのでしょう。

 ただ、文化だから今と同じ形で残すべきだとは思いません。デジタル化、オンライン化を進める障害になっていることは間違いないので。オンライン申請での本人確認は厳密に行う必要がありますが、婚姻届のデジタル化は可能ですし、役所の業務効率化になります。「やっぱり婚姻届はハンコを押さないと・・・」という夫婦は、ハンコを押した婚姻届を作って手元で保管しておけばいいだけの話です(そういえば自分もコピーをとりました・・・。家のどこかにあるはず)。

 ハンコに限った話ではありませんが、こういう風に人の「気持ち」が絡んでいる仕事こそ、今までと違うやり方に変えるときには丁寧な説明が必要です。仕事のやり方を変えるとどのようなメリットがあるのか、どうしたら円滑になくせるかをよく考えた上で、納得を得ながら進めていきましょう。

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