年金保険料を65歳まで納めるのは悪くない

 今回は積立投資と直接関係はありませんが、公的年金の話です。老後のために積立投資をしている人は多いので、全くの無関係ではないということで許してください。

財政再検証

 (ざっくり言うと)公的年金は100年間続けられるように設計されていて、本当に大丈夫か5年に1度検証しています。これを「財政再検証」といって、今年がその年です。今回、財政再検証に当たって「国民年金を65歳になるまで納めたらどうなるか」の試算も行うと報道されました。すると、反対やら拒否反応の強いこと。ただ、ネットニュースのコメント欄もテレビのコメンテーターも年金制度への誤解があまりにも多くて。すべては無理ですが、少し解説します。

空白の5年

 今回試算しようとしているのは、現在は公的年金の保険料納付義務があるのは20歳~60歳になるまで(59歳まで)の40年間ですが、これを65歳になるまで(64歳まで)に5年間延ばしたらどうなるか、というものです。

 年金を受け取り始めるのは原則65歳からなので、60代前半の5年間は「保険料を納めるでもなく、年金を受け取るでもない」空白の5年間になっています。だからこの期間も保険料を納めることにしましょう、というのはおかしな話ではないと思います。

納めた人の年金は増える

 新たに5年間保険料を納めたら、納めた人の老齢基礎年金はその分増えるはずです。年金保険料を40年間納めた人は老齢基礎年金を816,000円(2024年度)受け取れるので、45年納めればこれに45/40を掛けて、918,000円になる計算になります。意外とインパクトありますね。

 どうも、受け取る年金が増えることよりも支払う保険料が増えることばかり強調されているように見えます。また、65歳以降で既に年金を受け取っている人は保険料を新たに納めず、年金額は変わりません。だから、「今のお年寄りのためにさらに5年間保険料をとられる」ということでもありません。

根幹にあるのは年金不信

 さらに言えば、「自分たちが年を取ったときには年金制度は崩壊して受け取れない」「なのに支払う額だけは増える」という年金制度そのものへの根拠のない不信があるように思います。私もですがもう少し年金について勉強して、本当の姿を曇りのない目で見たいものです。

厚生年金とのバランス

 会社員や公務員等が加入する厚生年金保険の場合、今でも70歳になるまで(69歳まで)被保険者となります。正社員と同じか近い時間働いている人は、60代でも保険料は給与から天引きされているのです。また、厚生年金保険料にはいわゆる1階部分の国民年金保険料も含まれていますが、60代になって国民年金保険料の納付義務がなくなっても、厚生年金保険料は変わりません。ちょっと矛盾しているように思っているのですが、60代前半も国民年金の保険料を納めるようになれば半分(5年)はこの矛盾が解消されます。

 60代後半に関して言えば、在職老齢年金の廃止も試算するそうです。この辺りはまた別の機会に書きたいと思います。